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前回のレポートをもとにして、わかりやすく害虫防除の話とフェロモンについて紹介したいと思います。今回は、その1の解説です。
害虫管理とフェロモン製剤の利用 今回も第一回のレポートをもとに、昆虫のフェロモンとその利用についてわかりやすく紹介したいと思います
1. 総合的害虫管理
前回は総合的害虫管理という少し難しい話をしました。「畑や田圃にいる害虫はすべて殺してしまった方がいい」とする極端な消毒思想の結果、私たちの周りの生き物達は、益虫も昔から普通に見られた生き物達もずいぶんと数や種類を減らし、蓄積された農薬は鳥や牛乳にまで含まれるようになりました。 その反省を経て、1987年のブルントラント委員会で提唱されたように、「持続可能」という考え方が重要視されるようになりました。総合的害虫管理の思想はそれ以前より提唱されてはおりましたが、やはり持続可能な農業のあり方に沿っているものです。 合成農薬一本やりで害虫を撲滅しようとすれば、費用もかかりますが、壊された環境を回復する時間や労力は結局経済的損害へと導きますし、失われた種や心象風景はお金でも取り返すことは不可能です。 そこで経済の視点からもこれらの損失も考慮する必要があります。 そして、殺虫剤にたいして虫が強くならないよう、様々な作用種類の農薬の開発(幼虫のホルモン系に作用するもの、昆虫のみが利用する糖の阻害など)、天敵利用、不妊化されたオスの導入、昆虫のいやがる光、抵抗性品種作物、防虫網・べたがけ資材などの物理的防除など多方面の防除法を組み合わせた総合的な害虫管理が必要になってきたのです。 また、その方法を組み合わせるための、害虫の同定、害虫密度の推定など、様々な知見が、持続可能な農業に必要とされる時代になるのです。 ただし農業を純然とした経済活動とみなす時代は限界にきていると思われます。何のための農業かといえば、私たちの「食」と「健康」という根本的な問題に突き当たるからです。
2. フェロモンの害虫防除としての利用法
話をもとに戻しましょう。総合的害虫管理の一翼を担うフェロモンの利用についてでした。 ある種の生物が、同じ種の他の個体に、特定の行動をおこさせる化合物をフェロモンといい、とくに、オス・メスの交尾行動にはたらくフェロモンを、性フェロモンといいました。たとえば、害虫となるガは、主に夜行性なので、オスがメスを探すには目を使うわけにはいきません。そこでメスは数ng(1gの1000000000分の1))の性フェロモンを発散させて、オスを呼び寄せます。この微量でも効果を示すところが、製剤開発の魅力ともなりました。ホタルのように光や、コオロギのように音をオス・メスのコミュニケーションに用いているものは、フェロモンはないか、役割が低くなっていると考えられます。 このメスの出す性フェロモンを、化学的に合成して利用したものが、フェロモン剤です。
性フェロモン製剤の利点は ・害虫以外の生物(天敵や鳥、魚など)に影響を与えない低毒性 などがあげられます。
実際の利用法を、絵を用いて復習してみたいと思います。 1)発生予察法(モニタリング)
性フェロモン剤にオスが誘引されることを利用して、害虫が成虫になる時期を知ることができます。 幼虫がいなかったり、幼虫が発生し被害が出てから殺虫剤を散布するのでは、回数も散布量にも無駄ができます。 成虫が発生した時期や、発生量を知り、適切な時期に殺虫剤をまくことにより、使用回数を下げ、より効率のよい害虫防除ができます。農薬の使用回数や量が減るため、環境にやさしい作物づくりといえるでしょう。 フェロモン剤では、発生予察用の製剤がいちばん多く発売されています。 2)大量誘殺法
性フェロモン剤によってオス成虫を誘引し、水や粘着板などで近づいたオスを大量にとらえて、メスとの交尾率を下げる方法です。交尾するメスが減ることから、産卵できるメスを減らし、次世代の幼虫の発生をおさえることができます。ハスモンヨトウ用の製剤があります。 3)交信撹乱法
性フェロモンの特質を生かし、有効性をあげている使用法は交信撹乱法です。高い濃度の性フェロモンを農作地へ放出し、オスがメスを見つけにくくする方法です。オスは農場に満たされた合成フェロモンで、メスの居場所をつきとめられなかったり、鼻がなれてしまうため、メスを発見できずに交尾できない個体が増えます。そして次世代の発生数をおさえるといった方法です。とくに、害虫の密度が低い場合に効力を発揮します。白菜畑で利用しているヨトウコン、コナガコンもこれにあたります。 3. 害虫管理への期待 生物のもつ特性を利用したフェロモン製剤の利用は、殺虫剤の使用を減らし、環境にやさしい防除法です。 かつて殺虫剤の乱用により一時は減った害虫ですが、天敵の昆虫や鳥なども減り、さらに害虫は殺虫剤に抵抗性を増やしたため、より強力な殺虫剤を多量にまかなくてはならなくなりました。その結果、ますます益虫はへり、害虫は強くなり、防除が難しくなってきたことは冒頭に述べたとおりです。この悪循環を断ち切るために、やはり田畑を消毒するような考え方を変えてゆかなくてはなりません。 そのためには善き循環を創り出してゆかなくてはなりません。健康な堆肥と適切な肥料により、健康な作物を育て、病害虫に負けない農業を土や作物のほうから、変えてゆかなくてはなりません。殺虫剤の使用を減らすために、フェロモン剤や天敵などを利用したスマートな害虫管理をおこない、大量発生したときに環境に優しい農薬を用いる。こうした畑と植物とそこにすむ生き物のさまざまな性質を利用した次世代の農業技術に対して、生産者と消費者が理解を深めてゆくことによって、創造的で楽しく、地球におだやかな農業を続けてゆくことができるのではないかと思います。生産者の側も、地球環境や地域環境の保全というグローバルな視点を持ちつつ、地域においてそれに貢献できるような高い志をもって取り組んでゆく必要があると思います。 (第1回へ)もどる
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